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2024年09月11日

  • コラム

エッジコンピューティングの活用例は?導入・運用する上で注意しておきたいポイントも解説

エッジコンピューティングの活用例は?導入・運用する上で注意しておきたいポイントも解説

IoT技術の発展に伴い、重要性が増してきた「エッジコンピューティング」。しかし、このエッジコンピューティングという言葉を耳にしたことはあっても、どのように活用されているのかまでは説明できない…という方も少なくないかもしれません。

そこで今回は、クラウド環境が抱える課題の解決策ともなる「エッジコンピューティング」について、分野別の代表的な活用例を挙げるとともに、エッジコンピューティングを導入・運用する際に注意しておきたいポイントについて解説していきます。

従来のクラウド環境における課題を解決したい方、これからエッジコンピューティングを導入しようとお考えの方の参考になる内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

エッジコンピューティングとは

「エッジコンピューティング」とは分散コンピューティングの一つで、エッジデバイスやその近くに配置されたサーバーなど、ネットワークで繋がれた複数の端末でデータの処理を行う手法のことを意味します。

「エッジコンピューティング」の対比として使われる言葉に「クラウドコンピューティング」というものがありますが、このクラウドコンピューティングでは、各端末で取得したデータをクラウド上のサーバーに集約して処理を行います。一方、エッジコンピューティングでは、端末で取得したデータをその場で処理し、処理後の必要なデータのみをクラウドサーバーに送信するのが特徴です。

エッジデバイスと呼ばれるIoT端末内でデータを処理するため、通信によるネットワークの負荷や遅延を軽減できます。加えて、クラウドコンピューティングよりもリアルタイム性に優れています。これらのことから、現在では、判断に即時性が求められる自動運転システムや工場の生産ラインなど、幅広い分野・業務でエッジコンピューティングが活用されています。

関連記事:「エッジデバイスとは?その役割と仕組みについて分かりやすく解説

【分野別】エッジコンピューティングの活用例

【分野別】エッジコンピューティングの活用例

複数のエッジデバイスでデータ処理を行う「エッジコンピューティング」は、前述の通り既にさまざまな分野での活用が始まっています。
では、具体的にどのような分野で活用されているのか、代表的な活用例をご紹介します。

オフィスにおけるエッジコンピューティングの活用例

エッジコンピューティングの身近な活用例に、顔認証による入退室管理システムがあります。

例えば、企業のオフィスや研究施設などでは、ICカードをタッチして鍵を開錠する入退室管理システムが利用されていることも多いですが、ICカードの紛失や貸し借りによるなりすましが課題の一つとなっています。

そのような場合に活用できるのが、エッジコンピューティングを利用した顔認証による入退室管理システムです。

この仕組みでは、データを取得するAIカメラをオフィスの出入り口に設置し、あらかじめ従業員や関係者の顔を登録しておくことで、出入り口を通過する際に登録された人物かどうかを瞬時に判断することが可能になります。

AIを利用することにより、警備員が目視で確認するよりも精度が安定するため、なりすまし防止にも有効であるほか、入退室の時間や滞在時間、部屋ごとの滞在人数なども管理でき、セキュリティの強化だけでなくオフィスにおける入退室管理の効率化にも役立っています。

自動運転におけるエッジコンピューティングの活用例

エッジコンピューティングの代表的な活用例の一つには、車の自動運転システムもあります。

車の自動運転では、事故などを起こさず安全に走行するために、周囲の状況に合わせて瞬時に正確な判断を下す必要があります。それに必要なのがエッジコンピューティングの特長であるリアルタイム性です。

エッジコンピューティングでは、エッジデバイスと呼ばれる端末で取得したデータをクラウド上のサーバーに送信してから処理するのではなく、データを取得した端末内でそのまま処理・分析を行います。そのため、端末とサーバー間のデータの送受信による遅延が少なく、一瞬の判断が必要となる自動運転には欠かせない技術なのです。

自動運転システムでは、このエッジコンピューティングのリアルタイム性という大きな特長を利用し、車に設置したAIカメラやセンサーを使って道路標識や歩行者などを瞬時に判別。それらの状況に合わせて適切な運転をサポートしています。

関連記事:「エッジコンピューティングとは?メリット・デメリット・代表的な活用例などをわかりやすく解説!

製造業におけるエッジコンピューティングの活用例

製造業におけるスマート工場も、代表的なエッジコンピューティングの活用例の一つです。

製造工場では、生産・品質管理のほか、工場内の機器や設備を保守・管理する際など、幅広い用途でIoTの技術が使われているのですが、近年では24時間稼働し続ける工場も多く、あらゆる機器からのデータを収集するため、大量のデータが発生し続けます。

これらの膨大な量のデータをクラウド上のサーバーに集約して処理するとなると、場合によっては通信遅延が発生してしまいます。そうなると、生産体制に遅れが出てしまうほか、機器の故障や事故に繋がってしまう可能性もゼロではありません。そのような時に有効なのが、エッジコンピューティングの技術です。

エッジコンピューティングによってデータの処理をそれぞれの端末に分散させることで、ネットワークの負荷を軽減し、高速でのデータ処理が実現。それにより、生産ラインでの製造業務や検品作業、設備の保守管理業務など、製造業における業務を効率化することが可能となります。

関連記事:「製造業におけるIoT導入のメリット・活用方法は?生産現場での活用事例をご紹介

小売業におけるエッジコンピューティングの活用例

小売業でも、エッジコンピューティングの技術が活用されています。

例えば、店舗におけるマーケティングもエッジコンピューティングの活用例の一つです。
これまでは、調査員が目視で来店客の人数をカウントするなどで対応していたマーケティングリサーチ。そこにエッジコンピューティングの仕組みを利用し、店舗の出入り口や売場の通路などにAIカメラを設置してデータを分析することで、来店客の年齢・性別などの属性、動線・行動パターンのほか、店内が混雑する時間帯・エリアの把握などが可能になります。

エッジコンピューティングによって、店舗マーケティングに必要なデータの取得から分析までが大幅に効率化できるだけでなく、これまで数値化するのが難しかったPOPやポスターなどの広告効果を見える化することもできるようになるため、既に多くの小売業や商業施設などでは、マーケティング活動にエッジコンピューティングの技術が取り入れられています。

なお、AIカメラによるマーケティングの効率化については、こちらの「マーケティングを効率的に!AIカメラによる顧客分析で店内・サービスを最適化」でも詳しくご紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。

エッジコンピューティングを導入・運用する上で注意しておきたいポイント

エッジコンピューティングを導入・運用する上で注意しておきたいポイント

既に幅広い分野での活用例が見られるエッジコンピューティングですが、自社の業務に導入するだけで課題が解決したり、業務の効率化が実現したりする訳ではありません。

ここからは、エッジコンピューティングを導入・運用する上で注意しておきたいポイントについてまとめていきますので、ぜひ導入時の参考にご覧ください。

課題を明確化する

エッジコンピューティングを導入する際に、まず重要なのは課題設定です。

エッジコンピューティングの技術は、あくまでも課題を解決するための手段の一つ。ですので、そもそも「何を解決したいのか」「具体的な目標地点はどこなのか」を明確化しておかないと、エッジコンピューティングを導入すること自体が目的となってしまい、手段の目的化が起きてしまいます。

さらに、何とかエッジコンピューティングのシステムを導入したとしても、課題が明確化されていないことにより、何を目標に運用するのか社内の意識が統一できず、結果的にシステムが形骸化してしまう可能性もあります。

ですので、まず課題と目標を明確化させた上で、その解決策として「エッジコンピューティング」という手段が適切かを見極めることが大切です。そうすることで、目標に向けてどのような運用方法が適しているか、どの程度の機能を搭載した機器や設備が必要かなどの情報を具体化することができるため、スムーズに導入することができるでしょう。

継続的にモニタリングを行う

エッジコンピューティングに限らず、IoTのシステムを現場に導入する場合、その特性から「導入さえしてしまえば自動でデータを取得して分析してくれる」と思ってしまいがちです。しかし実際には、システム設計から実証の期間でしっかりと現場の状況を見ることに加えて、運用開始後の継続的なモニタリングが非常に重要となります。

というのも、周囲の環境や状況は常に変化するものですので、運用を始めてみたら「時間によって撮影エリアが暗くなってしまい、上手く撮影ができていない」「データに抜けがある」「想定よりも風が強く、設置していたエッジデバイスが動いてしまう」…など、思ったようにデータが取得できない可能性もあります。

ですので、

  • 想定外のことが起きていないか
  • 現場の状況が変わっていっていないか

…などを確認するために、導入後も継続的にモニタリングしておきましょう。改善を加えながら運用していくことが、成果へと繋がる最大の近道となります。

専門家に相談する

エッジコンピューティングをスムーズに導入・運用するためには、エッジデバイスから通信インフラやクラウドの仕組みに至るまで、エッジコンピューティングに関する幅広い技術と知識が必要となります。しかし、これらを社内のみで計画して運用システムを構築していくとなると、人材や工数の面から見ても非常に大変な作業です。

社内にそれらの専門知識やスキルを持つ担当者やチームがあればいいのですが、そうでない場合は、エッジコンピューティングについて幅広い知識と経験を持つサービス事業者に相談してみるのをおすすめします。

専門知識を持つサービス事業者であれば、その豊富な経験からエッジコンピューティングを導入する上での注意点や、運用する上で躓きやすいポイントを把握しているため、導入から運用までをスムーズに進めることができます。

また最近では、エッジコンピューティングを活用してデータを取得するだけでなく、解析後のデータ活用についてもサポートしてくれるサービスもあり、それらを利用することで自社内だけでは十分に活かしきれない部分を補って成果の最大化を目指すことができます。

ですので、最短距離でビジネスの成功を実現させるためにも、社内に専門知識や経験を持つ人材が不足している場合は、自社だけで何とかするのではなく、エッジコンピューティングの導入・運用に長けたサービス事業者に問い合わせてみると良いでしょう。

関連記事:「IoTにおけるエッジコンピューティングとは?その特徴や課題について解説

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